私が自負していることに「酒蔵と呑む側の通訳」がある。それぞれの立場で同じことを見ても醸す側の気持ち「なぜこうしているか?」がわかれば、酒質はもちろん知識でも味わえるのではないだろうか?そんな思いで醸す側呑む側双方の立場からの通訳を心がけている。
時には呑む側の要望をストレートに蔵人にぶつけてみることもある。もちろん甘い辛いだけで酒を旨いだまずいだ判断しようとする飲み手には「日本にある1700からの蔵でまずい酒をつくろうとしている蔵は一つもない、もったいないですよ」と諭すこともある。そんな言い方が出来るのも醸す現場に足を運び実際蔵人の酒造りに対する姿勢を目の当たりにしているから。
そんな思いが飲み手に伝わればと、これまでの蔵紀行の様子をBLOGに書いてみようと思ってから早一年。ブログタイトルの「全国の酒蔵紀行」だけに記事がなかった。取材した蔵は09年~10年シーズンだけでも11蔵を数えこれまでに15年間で訪ねた蔵は200を超えたが・・、しかし未だ記事にまとめられずにいたのだが、今回いきなり番外編でスタートを切らせていただくことになった。
そのきっかけは唯一の外国人の杜氏、フィリップ・ハーパー氏のご来店。4月某日今年のつくりをほぼ終えたフィリップさんが、これまたその世界では著名なジョン・ゴントナーさんを連れて珠庵に来てくれたのだ。ジョン・ゴントナー さんの 著書 日本人も知らない日本酒の話はその視点が特に楽しくこれから日本酒を学ぶ方にはお薦めできる。その中には梅の宿の蔵人時代のフィリップさんも出てくる。
ジョン・ゴントナーさんのブログもおもしろい。
その日は、素直に同世代の酒好きのイギリス人、アメリカ人、日本人として精米歩合のことや低温貯蔵、熟成酒などについて語りながら、料理にあわせて完全におまかせでお酒を選ばせていただいた。その中で特に彼らが喜んでくれたのが「20年間貯蔵した〆張り鶴の本醸造」と「日輪田 山廃純米の生酒」メリハリのあるラインナップをお楽しみいただけたようで嬉しい。この日学んだことも多くそのウンチクはまたの機会に。
酒蔵と飲み手の通訳は出来ても、日本語と英語の通訳は出来なかった。英語を勉強しようともう何度目になるかも覚えていない決心をした。早速ジョンさんのipod&iPhoneアプリ「Sake Dictionary」をダウンロード。もちろん英語。このアプリでデリケートな日本酒の表現を楽しみながら学ぼうと思う。
こだわりの山廃やキモト、旨い純米酒を醸し出すフィリップ・ハーパーさんのお酒に対する姿勢には常々敬服するが、先月、宮津市で行われた京都府北部利酒研修会での彼の一言「旨ければ純米にはこだわらない、今日の普通種美味しかったね!」が忘れられない。
彼の日本酒に対する思いが凝縮された一言だと思う。
フィリップ・ハーパー杜氏㊧ 木下社長㊨
全国の酒蔵紀行の一回目酒蔵に紀行せず珠庵に来ていただいた番外編でした。追伸・木下酒造さんを訪ねたら是非お酒の香りのソフトクリームを!
木下酒造有限会社 フィリップ・ハーパー杜氏
京都府京丹後市久美浜町甲山1512
TEL:0772-82-0071 FAX:0772-82-1770
北近畿タンゴ鉄道 宮津線 甲山駅 徒歩1分 (まるやすから約50分)